“M”が示す進化とは? 万能型フェラーリ「ポルトフィーノM」の実力

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フェラーリの現行ラインアップのなかで、最も多彩な使い方ができるのが「ポルトフィーノM」だろう。試乗で確かめた走行性能の仕上がりとともに、新モデルが備える万能性について紹介したい。

理由のひとつが、FR(フロントエンジン リアドライブ)の2+2(4人乗り)というレイアウトだ。エンジンをドライバーの背後に積むミドシップレイアウトのフェラーリは、レーシングマシン顔負けの操縦性と引き換えに、ラゲッジスペースの積載量はほとんど期待できない。

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一方、ポルトフィーノMは屋根を開けてハードトップを格納した状態でも、機内持ち込みサイズのスーツケース3つ、あるいはゴルフバッグ1つを積むだけのスペースが確保されている。 2+2ではあるけれど、後席はさすがに大人には狭い。ただし、子どもがまだ小さければ、家族4人で旅行に行けるフェラーリだと考えることもできる。

モデル名末尾の「M」はモディファイを意味し、従来型ポルトフィーノから進化していることを表している。ポルトフィーノからポルトフィーノMに移行するにあたり、エンジンの最高出力が600psから620psに引き上げられた。ただしドライバーにとってうれしいのは、パワーアップよりもデュアルクラッチ式のトランスミッションが、7速から8速へ移行したことにある。

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ギアが1段増えることの利点は、変速機付きの自転車に置き換えるとよくわかる。ペダルをこぎ始める時に、軽く感じるギアを選ぶと少ない負荷で発進できる。1速増えると、もっと軽く感じるギアが使えることになり、発進加速がよりスムーズで力強くなる。

反対にスピードが乗ってくると、重く感じるギアにシフトすると楽に走れる。こちらももう1段、重く感じるギアを使えば高速巡航時にエンジン回転数が低くなって、静粛性と省燃費に寄与することになるのだ。

ポルトフィーノMへの進化において、もうひとつ目に見えて良くなったことは乗り心地だ。従来型も悪くはなかったが、屋根を開けた状態で荒れた路面を突破する時や、首都高速の路面のつなぎ目を乗り越えた瞬間に、少しボディがゆがむ感覚があった。けれども、新モデルは格段にボディがしっかりした印象で、路面の不整を涼しい顔でやり過ごすことができる。この乗心地だったら誰からも不満は生じないはずで、都心部での買い物に使ってもいい。

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とはいえ、穏やかに走るだけなら、高いお金を払ってフェラーリを買う意味はない。従来型に用意されていた「コンフォート」「スポーツ」「ESCオフ」の3つのドライブモードに、新たに「ウェット」と「レース」が加わった。

「レース」を選ぶと、エンジンの反応はよりシャープになり、V8エンジンの甲高い音が鼓膜を震わせ、ドライバーの心を高ぶらせてくれる。雨の日に「ウェット」を選べば、横滑りを防ぐ電子制御がきっちりと作動して、クルマを安定方向に導いてくれる。

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つまり、シャープに走らせたい気分の時、子どもを乗せて旅行に行く時、雨の日に安全に走らせたい時、オシャレにショッピングを楽しみたい時など、さまざまなシチュエーションに対応してくれるフェラーリなのだ。

しかも屋根を閉じたら完璧なクーペ、屋根を開けたら開放的なオープンカーという2つの顔を持つ。もし何らかの幸運があって、“マイ ファースト フェラーリ”をチョイスする機会に恵まれたなら、ポルトフィーノMを一番に選ぶだろう。

フェラーリ ポルトフィーノM   車両本体価格:27,370,000円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 4594 X 全幅 1938 X 全高 1318 mm
  • ホイールベース | 2670 mm
  • 車両重量 | 1545 Kg
  • エンジン | V8 DOHC 32バルブ ターボ
  • 排気量 | 3855 cc
  • 最高出力 | 620 ps(456 kW)/ 5750 - 7500 rpm
  • 最大トルク | 670 N・m / 3000 - 5750 rpm
  • 最高速度 | 320 Km / h
  • 0 - 100 km/h| 3.45 秒

 

  • Text : Takeshi Sato

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