ポルシェらしさで新常識を作る「タイカン ターボ S」を体感

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ポルシェのEV「タイカン」の加速はいままでに経験のしたことのないものだった。アクセルペダルを踏み込むと、前方のブラックホールにすーっと吸い込まれるのと同時に、後方から大巨人にグイと押し出される--そんな感覚。シートに身体が押し付けられ、脈が早まるほどなのに、滑らかでノイズはほとんどない。前後に搭載される2つのモーターによる静かな暴力的加速だ。

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タイカンの圧倒的な個性は、他社EVの電圧システムが400Vであるの対し、世界で初めて800Vを採用したことからもわかる。800Vを採用することで実現するのは、ずば抜けた動力性能だけではない。より高圧の充電を受け入れることができるから、充電時間の短縮にもつながる。ポルシェはトータルでのパフォーマンス向上を念頭に置いて、EVを開発したのだ。

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これまで“ポルシェらしさ”は、その大きな部分をエンジンが担うとされてきた。「空冷フラット6の味がポルシェだよね」というように。けれどもタイカンに乗っていると、EVであってもポルシェらしさが色濃く出ているように感じる。

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なぜか? 私なりの整理を披露すると、ポルシェの個性とは、ドライバーの入力に対してクルマが瞬時に正しく反応してくれるところにあると思う。アクセルペダルを踏めば、瞬時にイメージ通りの加速が手に入る。ステアリングホイールを切れば、ごく自然にイメージ通りのラインをトレースすることもできる。ブレーキも同じで、ただ速度が落ちるだけでなく、ドライバーがこれくらいの速度に落とそうと意図した踏み方に正確に反応してくれる。ドライバーのインプットとクルマのアウトプットが、限りなく1:1に近いのがポルシェの魅力だ。

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EVのタイカンでは、アクセル操作のレスポンスがエンジンより一層素早く、正確になった。燃料を噴射して爆発させ、ピストン運動を回転運動に変換しギアを通じてタイヤに伝えるというプロセスを踏むエンジンよりも、モーターのほうがより素早く、ダイレクトにドライバーの意思が伝わるのは道理だ。大げさに言えば、エンジンとモーターの伝達力は、郵便とEメールほど違う。したがって、「ドライバーの入力に素早く、正確に反応する」というポルシェの美点が、より強調されているのだ。

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実は、ポルシェの創始者であるフェルディナント・ポルシェ博士は、1900年にウィーンの帝室馬車工房ローナー社で、エンジン車よりも先にEVの設計に取り組んでいる。当時は優れた電池がなかったのでEVは完成しなかったが、120年の月日を経て、リチウムイオン電池の性能が上がったことで博士の理想が実現したのだ。

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欧州各国は、地球温暖化の元凶と目される温室効果ガスを減らすために、2030年から40年をめどに、エンジン車の新車販売を禁止すると次々に発表している。そこでシェアを増やすと見込まれるのがモーターで走るEV。ただ、タイカンに乗っていると、エコカー文脈だけでなく、スポーツカーとしての正統進化であるようにも思えてくる。混沌の時代に登場した新常識を作っていく一台に違いない。

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ポルシェ タイカン ターボ S
車両本体価格:24,541,000円(税込)

  • ※表示価格にはオプションは含まれておりません。
  • ※価格には保険料、税金(消費税除く)、自動車リサイクル料金、その他登録等に伴う費用等は含まれておりません。
  • ボディサイズ | 全長 4963 X 全幅 1966 X 全高 1378 mm
  • ホイールベース | 2900 mm
  • 車両重量 | 2380 Kg
  • 最高出力 | 761 ps(560 kW)
  • 最大トルク | 1050 N・m

 

  • Text : Takeshi Sato

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