
2020年10月に発表された、新しいBMW 4シリーズ。大型化したフロントグリルに賛否両論が巻き起こっているけれど、その実力はいかなるものなのか。今回はBMW M440i xDrive クーペに試乗し、リニューアルされた4シリーズを検証する。

議論の的となっているフロントのデザインは、確かにインパクトがある。ただし、BMWの歴史を知るファンにとっては、押し出しが強いというよりも、クラシックな印象を覚えるだろう。BMW 303に代表される第二次大戦前後のBMWは、今回の新型4シリーズと同様に縦方向に長いグリルを採用していたからだ。

顔にはつい目を奪われがちであるけれど、新型4シリーズがエレガントさとスポーティさを合わせ持つ、美しいクーペのデザインをまとっていることにも注目したい。「クーペ(coupe)」はフランス語で「切る」という意味で、馬車の時代に使われた言葉。

馬車の後ろ半分を切ることで乗車定員を減らし、よりプライベートな空間として工夫を凝らすと同時に、運動性能の向上を追求しやすくなった。つまり、利便性よりも楽しむことを優先した贅沢なクルマがクーペなのだ。
新型4シリーズのクーペのスタイルで特徴的なのは、優美な弧を描くルーフのライン。このクルマがラグジュアリーなモデルであることを表現している。ルーフラインは真っすぐ伸ばしたほうが後席の頭上空間を確保しやすいが、このクルマは実用性よりカッコよさを選んでいる。そのあたりの割り切りが潔い。
リアのフェンダーの張り出しは後輪で力強く地面を蹴るイメージを強調し、FR(後輪駆動)がベースになっていることも表現している(試乗車のM440i xDrive クーペはFRをベースにした四輪駆動)。総じて、居住空間などの細かいことは気にしないで、カッコよくてびゅんびゅん走るクルマにしようぜ、という本来の意味でのクーペ的なスタイルになっている。
前述したようにフロントグリルがクラシックに回帰しているから、全体の印象は良い意味で古典的で、クーペの王道だ。おもしろいのは、クラシックな見た目に反してドライブフィールがモダンなことで、まず乗り心地が洗練されている。
舗装の荒れた部分や道路のつなぎ目を強行突破しても、しっかりとサスペンションが伸び縮みして、路面からのショックを吸収してくれる。これまでに経験した「M」を冠するモデルは、速いけれど乗り心地がキツかった。でも、これはいい。
操縦性と乗り心地が、非常に高いレベルでバランスが取れた仕上がりになっている。これなら、パッセンジャーシートに誰を座らせても問題ない。

パワートレーンも現代的で、直列6気筒DOHCターボは低回転域からしっかりと力を発生する。そして、ひと昔前の「エンジンはNA(自然吸気)がおもしろくて、ターボは退屈」という常識はもう通用しない。

回転が上がるごとに力感がみなぎり、同時に抜けのよいエグゾーストノートが心地よく鼓膜を震わせる。エンジン回転数ごとにドラマを感じることができるから、エンジンを回すことに意味がある。新しい時代のスポーティなエンジンだ。
ちょっとクラシックなスタイルに、最新のドライブフィールを組み合わせたこのクルマは、「やっぱりクーペっていいな」と思わせてくれる一台だった。後席を倒すことで荷室は大幅に広がるから、パートナーと2人でゴルフに行く使い方も極めて現実的だ。
BMW M440i xDrive クーペ
車両本体価格:10,250,000円(税込)
- ※表示価格にはオプションは含まれておりません。
- ※価格には保険料、税金(消費税除く)、自動車リサイクル料金、その他登録等に伴う費用等は含まれておりません。
- ボディサイズ | 全長 4775 X 全幅 1850 X 全高 1395 mm
- ホイールベース | 2850 mm
- 車両重量 | 1740 Kg
- エンジン | 直列6気筒 DOHC ターボ
- エンジン排気量 | 2997 cc
- 最高出力 | 387 ps(285 kW)/ 5800 rpm
- 最大トルク | 500 N・m / 1800 - 5000 rpm
- Text : Takeshi Sato
- Photographer : Koichi Shinohara
お問い合わせ先
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BMW カスタマー・インタラクション・センター:0120-269-437
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