それでも注目され続けた理由 ピンゴルフジャパン 安齋伸広

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【2020年アクセス数ランキング】アイアン部門 No.1 ピン『G710』特別インタビュー

2020年GDOアクセス数ランキングのアイアン部門で、年間1位を獲得したピン「G710 アイアン」。多くの注目を集めるに至った性能やキャッチフレーズの成り立ち、そしてコロナ禍でも変わることのない理念とは――。プロダクトマーケティングマネジャーの安齋伸広氏に聞いた。

予想以上に浸透した『飛び系なのにズルい』

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―コロナ禍でも注目され続けた理由は?
「“飛び系なのにズルい”というキャッチフレーズが予想以上に浸透したこと。シリーズ最大の慣性モーメントだけでなく、初速、弾道の高さが前作『G700』を超えるパフォーマンスを多くの人に体感してもらえたこと。前作『G700』のシルバーからブラックに変え、精悍さが増したヘッドとして受け入れられたことなど、販促展開する上で厳しい状況の中でも、多くのお客様に受け入れられた要因はいくつか考えられます」

―特に“ズルい”というキャッチフレーズの浸透は大きい?
「そうですね。キャッチフレーズを付ける際、いつも製品の性能をいかにシンプルに伝えるかということを念頭に置いています。特に『G710』はゴルファーがアイアンに望む全てを叶える性能が揃ったことで、これは“ズルいアイアンだな”という、総評から生まれた言葉です」

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―“ズルい”部分は性能面でも特徴的ですね?
「ピンは“前作を超えなければ発売しない”という哲学をもっています。『G710』で言えば、前作『G700』を超えないといけません。中でも苦労した点は打感。一般的に、ボール初速を上げるために中空構造でフェースを薄くすると打感が悪くなりやすい。『G710』では中空構造でも、振動を抑えて、心地よい打感と打音が得られる構造へと進化しました。そのような外側だけでは気付かない細かな改善点が、“ズルい性能”につながったと思います」

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―ピンで初めて『アーコス』機能を搭載したことも大きく影響している?
「ピンゴルフジャパンの社長でもあるジョン・K・ソルハイム氏が早くから、一人のゴルファーとして『アーコス』を使い、すごく便利で、スコアアップにつながると気に入っていました。各番手の飛距離が分かることはピンにとってフィッティングの精度を上げることにもつながりますし、左右の曲がり幅も分かってくるとミスの傾向も見えてきます。ゴルファーにとってメリットがあることは当社の理念でもあるPLAY YOUR BESTに通じるものがあり、採用することを決めました」

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―常にゴルファーを意識する。その部分は以前より強くなった?
「いえいえ(笑)。そもそもピンは、エンジニアカンパニーという想いを強く持っています。最高の製品をつくり、ゴルファーに届けることだけを純粋に続けてきたメーカーです。一人でも多くのゴルファーに打ってもらい、パフォーマンスを体感していただく。フィッティングを通して一人ひとりに最高のクラブを提供したいという想いは、約60年前の創業当時から変わっていません」

外から見たピン、内から見たピン、
変わらないピン

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ピンゴルフ並びにピンゴルフジャパンのCEOは、創業者カーステン・ソルハイム氏の孫に当たるジョン・K・ソルハイム氏が務める。ジョン・K氏は、2011年から先行してピンゴルフジャパンの社長に就任し、数年間日本に居住していた経歴を持つ。安齋氏がピンに入社した2008年当時は、米国の開発部門を統括していたのがジョン・K氏で、一緒に仕事をしていたため、来日前から面識があったという。

―ジョン・K氏はどのような人柄?
「実はすごく日本人に近い性格をしています。製品開発に関して妥協は一切許しませんし、研究にとても熱心。経営者というよりエンジニアの一人として、良い製品をつくる、前作を超えるという地道な作業を常に追い求めている人です」

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―安齋さんがピンに入社して感じたことは?
「入社して一番驚いたことは、これほどゴルファーのことを考えながら、クラブを開発しているのかという姿勢でした。入社前から同社の製品は知っていましたが、製品に対する想いや哲学までは知らなかったので、当時の自分には『まず、フィッティングを受けろ』とアドバイスしたいです(笑)。そういうゴルファーの方は今もすごく多いと思っています。『G425』や『G710』という製品のことは知っていても、ピンのフィッティングや開発理念を知らない方が多いと思うので、それをこれからも広めていきたいです」

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―ここ数年の躍進をどう感じている?
「おかげさまで皆さまから数多くの反響をいただきますが、ピンは本当に変わらない会社で、ブレのないメーカーです。開発に関しても、『前作を超えない限り、発売しない』という方針は創業当時から変わっていません。新製品が出たら、まずは実際に打ってもらい、パフォーマンスを体感してもらうだけ。フィッティングを大切にする理念もずっと継承しています。それができるのは、創業から家族経営で3世代続いているピンだからこそ。ゴルファーのことを見て、ゴルファーのことを考え、ゴルファーのためにクラブをつくり続けている。これに尽きると思います」

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ゴルフ業界でもプロツアーの自粛や延期、中止が続いた2020年。ゴルフメーカーにとってマーケティング活動が難しい一年となったが、ピンは常にゴルファー目線で新製品を開発し、創業当時から変わらぬ想いを製品に込めてきた。

打てば、新しさが伝わり、スコアが変わる――。道具を通じたゴルファーとのコミュニケーション。その信頼関係を築いてきたからこそ、コロナ禍でも注目され続けたのかもしれない。

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安齋伸広(あんざい・のぶひろ)

1978年生まれ。2008年にピンゴルフジャパンに入社し、11年に発売された『G20』シリーズから開発部門に。現在はプロダクトマーケティングマネージャーとして、『i210』『G710』『G425』とヒット作に携わっている。

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