フェラーリ・ローマが提案する新しい「甘い生活」

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日常生活においてスーパーカーは縁のないモノだと思われます。なんといっても「非日常」なのがスーパーカーですから、あまり身近なのもどうかと。したがって、製造や販売にでも関わらない限りなかなか情報は入ってきません。テレビコマーシャルが流れるわけでもないですし、ネット広告が待ち構えていることもないでしょう。こちらからアクセスしない限りスーパーカーとは親しくなれません。このところフェラーリの動きが活発なような気がしませんか?立て続けに新型車をリリースし、実際に話題をさらってもいます。2017年はフェラーリ社が設立70周年アニバーサリーを、2019年はスクーデリアフェラーリが90周年を迎えました。スクーデリアフェラーリはフェラーリのレーシングコンストラクターで、フェラーリ社創業前はアルファロメオのレーシングチームとして活躍していました。

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    ピュアで洗練されたスタイリングと完璧なプロポーション

そんな背景もあって昨年一年間は、3月にF8トリブート、5月にSF90ストラダーレ、9月にF8トリブートスパイダーをワールドプレミアさせました。なかでもフェラーリ社初の量産型プラグインハイブリッドとなるSF90ストラダーレの注目度はひと際高かった印象があります。これからのフェラーリがすべてプラグインハイブリッドになるのか?という興味が湧きましたからね。まぁ、フェデリコ・パストレッリ(フェラーリ・ジャパン株式会社 代表取締役社長)に直接インタビューした限り、そうはならないようなのですが。

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さて、今回紹介する新型車もその流れに沿って登場した一台です。名前はフェラーリ・ローマ。ワールドプレミアは昨年11月で、場所はもちろんその名の由来となったイタリアの首都ローマでした。これまでモデナやマラネッロ、フィオラノというフェラーリのお膝元の地名を名付けられることは多々ありましたが、今回は首都の名を冠したのですから特別な存在意義を感じますね。

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資料を見てみると、命名の由来について、1950から60年代のローマの自由なライフスタイルをモチーフにした、としっかり記載されていました。敗戦からある程度時間が経ち、戦後の復興で人々の心と財が豊になってきた頃でしょう。彼らは芸術やエンターテインメント、食文化にチカラをいれていました。映画監督の巨匠フェデリコ・フェリーニの代表作「甘い生活(Dolce Vita)」が公開されたのもこの時期です。

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    優美なボリューム感をもつフロントマスクは、どこか妖艶でエレガント

フェラーリ・ローマはまさにその「甘い生活」を意識した新型車です。開発コンセプトをイタリア語で表記すると“La Nouva Dolce Vita”。直訳すると「新しい甘い生活」。つまり、当時のムードや価値観を現代的に解釈したということのようなのです。そんなコンセプトを持つローマは、どこか妖艶でエレガント。フロントミッドにマウントされるパワーユニットを意識させながらバランスよいプロポーションをまとっています。2ドアクーペならではの美しいフォルムを最大限に表現している感じ。それでいてどこかレトロな印象があるのは、1960年代のフェラーリ製GTカーへのオマージュもあるのでしょう。難解にも思えるコンセプトをこれだけ美しくまとめたのですから、まさにデザインの勝利といったところでしょう。

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    リア回りのデザインもエレガントで、躍動感溢れるリアフェンダーが美しい

ところで、近年のフェラーリは社内デザインセンターが行っているのをご存知でしょうか。「フェラーリデザイン=ピニンファリーナ」という図式はもう過去の話。2015年に発表された488GTB以降は社内チーフデザイナーのフラビオ・マンツォー二氏が指揮をとっています。冒頭に記載したモデルはもちろん、ワンオフのモンツァSP1/SP2も手掛けています。ピニンファリーナからの脱却は、世界中の熱いフェラーリファンを納得させるのに大変だったと思われますが、彼は見事にそれを成し遂げたわけです。お見事!!ちなみにフェラーリ通の方はご承知でしょうが、ローマは当初、4シーターリトラクタブルハードトップのポルトフィーノのクーペ版という位置付けで登場すると思われていました。つまり、ハードウェアはそのままに、デザインの一部を変え、よりアグレッシブな走りができるように仕上げるものと予想されていたのです。

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ですが、先ほど説明したコンセプトからも理解できるように、フェラーリは良い意味で世界の予想を裏切ってきました。ローマは亜種ではなく全く新しいものとして世にリリースされたのです。しかも、コンポーネントの70%は新設計というから驚きです。ここまでやるか!ってくらい別物。ボディシェルとシャーシには最新の軽量化技術と高度な生産技術が取り入れられているそうです。フェラーリ社のテクノロジーは日進月歩なんですね。

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    フロントミドシップに搭載されるのは3855cc、V8ツインターボ

エンジンは3.9リッターV8ツインターボで、最高出力620ps、最大トルク760Nm。このユニットは4年連続でインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーを獲得しているV8ターボファミリーの一員ですが、ポルトフィーノが600psであることに鑑みれば、手が加えられていることは説明不要でしょう。ターボ用タービンの最大回転数を上げてパワーアップを実現しました。それでいて排出ガスのクリーン化も同時に進め、ヨーロッパで最も厳しい排出ガス基準“ユーロ6D”をクリアしたのですから立派です。ギアボックスは8速デュアルクラッチ。これはSF90ストラダーレに積まれているものと同じで、軽量かつコンパクトがウリのトランスミッションです。

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    デュアル・コックピットの理念をダッシュボードからキャビン全体に拡大

コクピットは、運転席側だけでなく助手席側もコクピットのようなデザインとする“デュアル・コクピット”という考えに基づいて設計されています。ですが、ローマはダッシュボードだけでなく、センターコンソールまで使ってそのデザインを進化させ、他のモデルとは一線を画す仕上がりです。もともとは1950年代から60年代のレーシングカーによく使われていたカタチだけに、エレガントかつスポーティでありながらハイテク感を強く匂わせるローマのインパネ周りは新しさを強く印象付けます。

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忘れがちですが、このクルマもまたポルトフィーノ同様リアシートが備わります。フェラーリ流に言うと“2プラスクーペ”。定員は合計4名です。ですが、あくまでそこは非常用、もしくは子供用として認識しておいてください。

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以上が新型ローマの所見です。デザインの美しさが機能性をより高めるという、いわゆる機能美とも異なる世界に、つかの間触れることができた気がしています。同じプライスレンジ2000万~3000万円台のクルマをラインアップするコンペティターは、きっとこの新しく美しいフェラーリを警戒しているはずです。「スーパーカーは非日常」と申しますが、、、GTカーはそれより少し快適な分、日常度も高まります。もろもろ条件が整う方は、ローマの助手席にゴルフバッグを積んでメンバーコースに行くことを想像してみては? きっと普段より早くゴルフ場に着いちゃいますよ。

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Ferrari Roma
車両本体価格:26,820,000円(税込)

  • ※表示価格にはオプションは含まれておりません。
  • ※価格には保険料、税金(消費税除く)、自動車リサイクル料金、その他登録等に伴う費用等は含まれておりません。
  • ボディサイズ | 全長 4656 X全幅 1974 X全高 1301 mm
  • ホイールベース | 2670 mm
  • 車両重量 | 乾燥重量1472kg
  • エンジン | V型8気筒 ツインターボ
  • 排気量 | 3855 cc
  • 最高出力 | 620ps(456kW)/ 5750-7500 rpm
  • 最大トルク | 760 N・m / 3000-5700 rpm
  • 0-100km/h | 3.4秒
  • 最高速度 | 320km/h

 

  • Text : Tatsuya Kushima

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