メルセデス・ベンツ EQC、クルマ好きも納得の一台です。

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日産リーフからテスラまで何かと話題のEV(電気自動車)。その行く末が自動車産業の未来を明るくするのかどうか?なんて論じられていますよね。でもそれが中心となるにはまだまだ課題も山積。なんて思っていたら、かなり魅力的なEVが登場しました。“自動車の父”メルセデスのEVはクルマ好きも納得の一台です。

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いまでこそ、ヨーロッパを中心とする各カーブランドは個性を発揮し、健全な経営をおこなっていますが、20世紀終盤はそうでもありませんでした。親会社がコロコロ変わり開発資金は少なく、クルマの出来も決して優れているとはいえなかったですよね。デザインはいいけど、壊れたら直せないイタリア車や英国車はザラだったような。

そんな中、ずっと信頼を得てきたブランドがあります。メルセデス・ベンツです。質実剛健を絵に描いたような立ち振る舞いでクルマを開発してきました。四十路以上の皆さんなら“高級車=ベンツ”はデフォルト。もちろん、いまもSクラスはその図式において鉄板ですがね。

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そのメルセデスが自社ブランドで初めてとなるEVを開発しました。EQCです。“EQ”は彼らが独自に開発したフルエレクトリックドライブシステムをいいます。高出力モーター、大容量リチウムイオンバッテリー、それと充電システムからなります。モーターはフロントアクスルとリアアクスルにそれぞれ1つずつ備わります。つまり、簡単にいうとヨンク。メルセデス的ルールに則れば4MATICとなります。通常はフロントのみが駆動し、パワーが必要になるとリアも駆動するという仕組みです。

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まぁ、この辺はすでに他メーカーでもおこなっているのでそれほど、驚くことではありません。ホンダNSXのような3モーターもありますが、SUVやクロスオーバーのカタチをしたこの手のモデルは、2モーターが常識になってきています。もちろん、それなりにコストがかかるのでミッドサイズ以上の高級車となりますが。

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ではEQCの“C”ですが、これは何かというとクラス分けになります。つまり、セダン系で言うところのCクラス、SUVでのGLCってことです。実際にプラットフォームはGLCと共有しているので、そのまんまという感じですね。というか、今後EQAとかEQBとかEQEとかEQSとか広がることが予想されます。さすがにGクラスのEVはないでしょうがね。あったら楽しいのに。

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EQシリーズのスタイリングは、このようなSUVともクロスオーバーともいえるようなパッケージングとなります。足元の床下にバッテリーを敷き詰めますから、キャビンに厚みを必要とします。なので、セダンでこれをやるとやたら不格好になってしまいます。その意味じゃ今日のSUVブームはEV開発にとってとても都合のいい流れだったのかもしれません。みんながキャビンの分厚い背の高いクルマを受けいれたことで、販売的にも楽になっていることでしょう。ジャガーIペイスがいい例ですかね。

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実際EQCを街中で見ても違和感はありません。フロントマスクこそ見慣れませんが、全体の雰囲気は今日的SUVかと。クルマに詳しくない人はEVだと気づかないでしょうね。詳しい方は「あのグリルは……!」となります。

インテリアは、これまでの自動車のセオリーに準じながら新しさを取り入れています。メーター位置からセンターまで一枚でできている液晶モニターは、Aクラスなど新世代メルセデスデザインと同じです。そこからセンターコンソールに流れる一連の造形もそうでしょう。ただ、ドアトリムのメタル感やエアコン吹き出し口に差し色として使われる造作物は個性を発揮します。どこかレトロでかつモダンな印象。個人的にはセンス良く思えました。

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それでは注目の“走り”に話を移しましょう。

じつは初めからここが訴えたかったポイントです。というのも、このクルマの走りはこれまで乗ったEVとは明らかに違います。アクセルを踏んでスッと動き出した瞬間から驚きました。EVっぽくないんです。極端にいうならば、その動きはガソリン車。街中での出だし、高速道路での中間加速、さらに踏み込んだ加速など、とても自然で違和感なくクルマを前へ進めます。これまでのEVであればやはりトルクが勝ってリニアな加速は望めませんでした。ジャガーIペイスやアウディe-tronはこれに近いですが、正直ここまでガソリン車的ではありません。きっとメルセデスは自分たちがEVを作るにあたり、その完成形を強くイメージしたのでしょう。なんたって彼らには自動車たるものを作った自負がありますから、そこにも強いこだわりを持ったのは想像がつきます。結論としては、よりガソリン車に近づけるフィーリングを目指したようです。

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ユニークだったのはドライブモードをECOにした時です。アクセルを踏んだ時の反応は遅く、一瞬「アレ?」という気になります。壊れた?みたいな。ですがそこからじんわりトルクが発生し、グイッとフロントタイヤを動かします。通常のEVは急にトルクが立ち上がって一気にドーンと加速するのですが、それがありません。いついかなる時も自然で、ドライバーを慌てさせません。このドライブフィールは昔のメルセデスに似ています。W123型時代のEクラスです。走りながら20代に乗っていた1985年型230Eを思い出しました。思い込みですよね。まさかそんな時代のモデルをイメージして開発したなんてことは考えられませんから。

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メルセデスのような優等生的ブランドにはファンも多ければアンチもそれなりにいると思います。かつての私は完全なる後者で、所有することでその味にやられちゃいました。長く乗れば乗るほど身体になじむんです。きっとEQCもそんな風に仕上げられているのでしょう。今回はたった1日のテストドライブでしたが、その片鱗を感じました。

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そう考えるとゴルフ場までの足にはいいかと。ラウンド後の帰り道はECOモードでまったり走ることをお勧めします。そして朝はSPORTモードでグイグイ走る。ステアリング上のパドルはこの時威力を発揮します。これは4段階の回生ブレーキの強さを操るものなんですが、コーナー手前ではエンジンブレーキ的な効果を発揮してくれます。かなりアグレッシブな走りができるかと。ついでにいうと、もっとも回生を強くするとアクセルペダルだけのワンペダル操作が出来ちゃいます。完全停止まではいきませんが、そこそこのブレーキ効果があるんです。これは活用しないと。

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そんな感じのEQCですが、インフラを含めまだまだEVに足を踏み込めない気持ちも正直あります。いくらガソリン車から乗り換えて違和感ないといってもガソリンスタンドで気軽に充電はできませんから。全国のゴルフ場の駐車場にもう少し充電設備が増えてくれるといいのですがね。その辺のタイミングを見ながらのEQCカーライフを妄想してみてください。

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Mercedes Benz EQC
車両本体価格:10,800,000~(税込)

  • ※写真はオプション装着車。
  • ※表示価格にはオプションは含まれておりません。
  • ※価格には保険料、税金(消費税除く)、自動車リサイクル料金、その他登録等に伴う費用等は含まれておりません。
  • ボディサイズ | 全長 4770 X全幅 1925 X全高 1625 mm
  • ホイールベース | 2875 mm
  • 車両重量 | 2500 Kg
  • 最高出力 | 408ps(300kW)/ 4160 rpm
  • 最大トルク | 765 N・m / 0-3560 rpm
  • モーター | 交流誘導電動機
  • 定格出力 | 145 kW

 

  • Photo : Koichi Shinohara
  • Text : Tatsuya Kushima

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