複数のクルマを所有するのであれば、そのうちの1台はクーペにしたい。2ドアのスタイリングはそれだけで優雅であり、日常っぽさとは無縁という特徴がある。その気になればすこぶる速いクーペで、早朝の高速道路をゆったりと流しながら今日のプレーに思いを馳せる。BMWのラインナップに復活した8シリーズはその最上の選択肢といえる。
Paragraph01 8シリーズ、最も粋なBMW
2ドアのスポーツクーペは我が国では決して人気車種とは言えないだろう。同じモデルで2ドアと4ドアを迷った場合、最後は何かと便利だからという理由で4ドアに決まってしまうことも多い。だがセダンが便利な乗り物であるが故に失ってしまった〝粋″のようなものがクーペにはある。それはツアーバッグではなく、敢えて細身のゴルフバッグでラウンドする軽快感のようなものかもしれない。
BMWのラインナップに新たに加えられた8シリーズは、クルマ好きゴルファーの興味を惹く1台に違いない。BMW M850i xDriveは'60年代から続く同社の伝統的なラグジュアリークーペの最新版なのである。セダンなら7シリーズ、SUVならX7を最高峰とする現在のBMWだが、しかし最も粋な1台と言えば最新の8シリーズだろう。
では実際に、BMW M850i xDriveというクルマのどこが粋なのだろうか?それは現時点のガソリン・エンジン車として考えられるハイテクの多くを搭載していながら、それをあまり匂わせない性格にあるのだと思う。 機能を主張せずにいられないお国柄やブランドも少なくないが、ドイツといえば古くから自動車のテクノロジー大国であり、機能的であって当然という認識がある。また本当に優れた技術はその存在を人に覚らせてはいけないという考え方も根強い。だからM850iはスーパーカー並みの動力性能を湛えながら、例え免許取りたてのドライバーであっても普通に運転できる1台に仕上がっているのである。
Paragraph02 意匠と広さ、クーペならではの贅沢
M850iのインテリアは普遍的なBMWらしさの中に、スペシャリティ・クーペらしい贅沢な意匠が散りばめられたもの。巨大なダイヤモンドのようなシフトレバーはその象徴であり、ダイナミックな造形がダッシュパネルからインナードアへと連続している感じも標準的なBMWと一線を画している。
それでも操作方法はお馴染みのBMWそのものである点が嬉しい。シフトレバーとその右側に並ぶスイッチで走りをプロデュースし、シフター左側のiDriveユニットでインフォテイメントを操るという所作はこれまでと変わりないのである。このためBMW車をドライブした経験があるドライバーならば直感的に操作できるはずだ。ドライバー正面のメーターは12.3インチのLCDパネルを使用したもので、時計回りの速度計と反時計回りの回転計にはちょっとした違和感を覚えるが、2つのメーター間に表示されるナビは視線の移動が少なくて思いのほか扱いやすい。
リアシートはたっぷりとしたスペースが確保されているが、フロントシートを倒して行う乗り降りが少々面倒というのはこの手のクーペの定石通り。M850iを粋に乗りこなすのであればリアシートはちょっとした荷室と捉えた方がいいだろう。
メリハリのあるクーペスタイルを売りとしているM850iなので、ラゲッジスペースの形状はシャープに絞り込まれたリアボディの影響を受けている。だが実際にゴルフバッグを入れてみると使い勝手の良いスペースであるとすぐにわかった。1本積みならばトランクの後ろ端に横方向に積むことができるし、2本積みであればクロスするかたちで縦方向に積むことができる。ゴルファー2人で使うとすれば、荷室は「申し分なし」と言っていい。
Paragraph03 車重を打ち消す軽快な身のこなし
基本的な運転操作は一般的なBMWと変わりないM850iだが、しかしそれなりの知識を持って臨まなくてはこのラグジュアリー・スポーツクーペの走りの本質を感じ取ることは難しいだろう。車重は2トン弱もあり見るからに大きなボディであるにもかかわらず、M850iは走りはじめた瞬間から驚くほど軽快な身のこなしを見せてくれる。遮音が効いており室内はかなり静かな部類に入り、乗り心地もしっとりしている。このため気づきにくいのだが、いつの間にかスピードが高まっていて驚かされることが多い。
M850iのスピード感のない独特のドライブフィールはこのクルマに仕込まれた様々なテクノロジーと紐づけることができる。例えば乗り心地は可変ダンピングのアダプティブMサスペンション・プロフェッショナルによって絶えず最適に保たれているし、コーナーではフロントのアクティブスタビライザーが車体のロールを打ち消してくれる。
しかもオプションのカーボンルーフを選ぶことで重心高も下げられこちらもロールの減少に効く。 さらには後輪操舵を含むインテグレーテッド・アクティブ・ステアリングが高速コーナーを安定させ、一方タイトコーナーでは小回りを可能にしてくれる。これらのハイテクによってM850iはビッグクーペらしからぬ軽快な運動性能を見せながら、その綿密な仕事ぶりを乗り手に覚らせないという独特のドライビングマナーを身につけているのである。 スピードは出ているけれどそれを感知させない秘訣はパワートレーンにもある。
530psを発生するV8ツインターボ・エンジンは0-100km/hを3.7秒で駆け抜けるほどのポテンシャルを持つが、ドライバーの心を読み取るかのような8速ATのマナーとxDrive = 全輪駆動が暴力的であってもおかしくない加速力を上品なものに手懐けているのである。
Paragraph04 当代最高レベルの自動運転を実現
一方BMWクーペのフラッグシップであるM850iは運転支援機能に関しても最先端のシステムが内包されている。それはハンズオフ機能で、渋滞にはまってしまった際の手放し状態の自動運転を実現しているのである。 これまではアダプティブクルーズコントロール(ACC)とレーンキープアシスト(LKA)を組み合わせたレベル2の自動運転は実現できていたが、ステアリングから手を放してしまうと15秒ほどで警告が入るシステムになっていた。
だがBMWは入念なテストを繰り返し、国土交通省の認可をとりつけることに成功し、この夏からは60km/h以下という条件はつくが、手放しの自動運転が可能になるのである。 すでにデビューしたての3シリーズにはこのシステムがすでに組み込まれており、夏頃にソフトウェアをアップデートすることで新たな機能が使えるようになる。ゴルフ場からの帰り道に渋滞はつきものなので、M850iのドライバーはいち早くハンズオフによるACCの恩恵を受けられるようになるのである。
BMW M850i xDriveのメリットは大型のクーペ特有の優雅な雰囲気と圧倒的な走行性能だけではない。最新のテクノロジーはクルマ全体の身のこなしを軽く感じさせ、渋滞の苦労からドライバーを解放し、また日常における狭い道での取り回しや駐車シーンをも快適にしてくれている。BMWのフラッグシップクーペとともにある生活にストレスが入り込む余地はないのである。
BMW M850i xDrive
メーカー希望小売価格:メーカー希望小売価格:13,120,000円~(税込)
- ※写真はオプション装着車。
- ※表示価格にはオプションは含まれておりません。
- ※価格には保険料、税金(消費税除く)、自動車リサイクル料金、その他登録等に伴う費用等は含まれておりません。
- ボディサイズ | 全長4855×全幅1900×全高1345mm
- ホイールベース | 2820mm
- エンジン | V型8気筒DOHCツインターボ
- 排気量 | 4394cc
- 最高出力 | 530ps(390kW)/ 5500rpm
- 最大トルク | 750Nm / 1800-4600rpm
- BMW M850i xDriveのトピック
- ●BMW伝統の優雅なクーペスタイル
- ●ハイテクフル装備を匂わせないスタンス
- ●4ドアセダン並みに広い室内、ラゲッジスペース
- Photo : Koichi Shinohara
- Text : Takuo Yoshida
お問い合わせ先
-
BMW ジャパンフリーダイヤル:0120-269-437
www.bmw.co.jp - ジョーンズ ニーディープ:TEL.03-5422-6421
www.kneedeep.jp