2019年はオーデマ ピゲ祭り!CODE 11.59とロイヤル オークが市場を席巻!

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1875年の創業以来、様々な傑作モデルを作ってきたオーデマ ピゲは、間違いなく時計業界屈指の名門である。しかも現CEOであるフランソワ-アンリ・ベナミアスは、かつてはフランスにてプロのツアーゴルファーとしても活躍してきた人物ゆえに、ゴルフ愛も極めて深い。つまりは時計とゴルフを愛するブルーダーが手にすべきマストブランドなのである。このオーデマ ピゲが、大攻勢をかけてきた。新コレクション「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」では創造性を表現し、大定番の「ロイヤル オーク」は新キャリバーを搭載してマイナーチェンジを果たす。この勢いは、ちょっと無視できないレベルにある。

今年1月に開催されたラグジュアリーウォッチの見本市「ジュネーブサロン(S.I.H.H.)」では、数々の名門ブランドから魅力的な新作がいくつも発表された。しかし“2019年の主役”はどこかと問われれば、間違いなく「オーデマ ピゲ」であろう。そもそも“新作”とはいいつつも、これだけ多様なスタイルが生まれた現代では、“完全なる新作”を作ることは難しい。サイズ変更やカラーバリエーションの追加、新素材など、既存モデルの熟成も含め“新作”とするのが現状なのだ。しかし今年のオーデマ ピゲは違った。デザインもコンセプトも、そしてムーブメントさえも全く新しい「コード 11.59 バイ オーデマ ピゲ」を発表したのだ。シンプルな三針モデルから最高峰のハイコンプリケーションまで、全13型を一気に取り揃え、2月には発売を開始する(まずはブティック限定)というスピード感も極めて異例だった。しかし驚きは、これだけでは終わらない。屋台骨でもあるラグジュアリー・スポーツウォッチの王者「ロイヤル オーク」も、デザインやサイズ感はそのままに新型ムーブメントを搭載し、精度の安定性や持続時間の延長といった基本性能を高めてきたのだ。ラグジュアリーウォッチの世界では、常に新しい提案や発想を求められる一方で、永続性も大切にしなければならない。オーデマ ピゲは完全なる最新コレクションと定番モデルの熟成という、二律背反する要素を2019年に一気に成し遂げることで、2019年のS.I.H.H.の主役となったのだ。奇しくも同社は、来年からはS.I.H.H.への不参加を表明している。つまり華麗な先行逃げ切りを決め、オーデマ ピゲは次なるステップを目指すということになる。この勢いは本物だ

名門の歴史と伝統を継承した、新コレクションがスタート

オーデマ ピゲ「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ・オートマティック」

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完全なる新コレクションである「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」だが、そのディテールを読み解いていくと、そこにはオーデマ ピゲの「DNAコード」がしっかりと息づいていることが分かる。例えばケース。サイドから見えるミドルケースは、オーデマ ピゲのアイコンである八角形であり、それをクラシカルなラウンドケースで挟み込む立体的な構造になっている。しかもミドルケースはサテンとポリッシュで磨き分けられており、その様子を中空構造のラグから鑑賞できるのだ。また、搭載ムーブメントも新開発となっている。長い歴史の中で培ってきた伝統技術はしっかり継承しつつ、大胆な進化を遂げることで、オーデマ ピゲらしい創造性を発揮する。それが「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」なのだ。これだけのビッグニュースには、当然ながら世界中の時計愛好家も注目。初年度はブティックのみの限定発売ということもあって、かなり入手困難な状況になっている模様だ。ちなみにモデル名の“11.59”というのは、新しい一日が始まる直前=11時59分を意味している。スイス屈指の名門であり、卓越した時計技術を持つオーデマ ピゲは、ここから新しいスタートを切る。そのスタートダッシュは大成功のようだ。

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[右]「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ・オートマティック」に搭載されるムーブメントは、新開発のCal.4302。振動数は毎時28,800振動にして精度を高め、パワーリザーブは約70時間。動力ゼンマイを巻き上げる回転錘(ローター)はゴールド製。[中]複雑な構造を持つケースには、オーデマ ピゲの創造性と優れた時計技術が現れている。[左]ラウンドケースはゆるやかにカーブしている。そのためサファイアクリスタル製の風防ガラスもカーブを描き、光の屈折によって深みのある表情を作るのだ。

SPEC
  • ケース径:41mm
  • ケース素材:18KWG
  • ベゼル素材:ブルーラッカー
  • ムーブメント:Cal.4302
  • 防水性:3気圧
  • 価格:¥2,800,000(税抜)
  • 発売中
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全13モデルをラインナップする、圧巻のコレクション

これまでも時計業界では、まずシンプルなモデルを発表し、徐々に機構を複雑にしていくというのが定石。ところが「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」では、三針の「オートマティック」、新型ムーブメント搭載の「クロノグラフ」、ダイヤルがキラキラと輝く「パーペチュアルカレンダー」、自動巻きの「フライングトゥールビヨン」、メカニズムを美しく表現した「トルールビヨン・オープンワーク」、そして澄んだ音色を豊かに響かせる「スーパーソヌリ」の6種類を用意。さらにケースやダイヤル色の違いも含めると、全13モデルが一挙に発売。これも業界を驚かせた

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」

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「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」のスタートという華々しい幕開けを切ったオーデマ ピゲだが、既存モデルを熟成させる事にも余念がない。オーデマ ピゲのアイコンといえば1972年に誕生した世界初のラグジュアリー・スポーツウォッチ「ロイヤル オーク」であることに疑念を抱く人はいないだろう。このモデルは1972年の誕生以来、特徴的な8角形ケースやベゼルのビスなどはそのままに、ムーブメントやサイズを変更しながら伝統を継承してきた。その人気はすさまじく、どの時計店も長いウェイティングリストを抱えているという。欲しいと願っても、簡単には手に入らない時計なのだ。このアイコンが、今年マイナーチェンジを果たした。41㎜というケース径はそのままだが、ムーブメントが名機Cal.3120から新型のCal.4302へと変更されたのだ。振動数がアップしたことで精度が安定し、パワーリザーブが70時間へと伸びたために、週末に別の時計を着けたとしても、月曜の朝まで力強く時を刻んでくれる。いうなれば体幹が強くなり、さらに魅力を増したという事になる。いつだって、最新が最良なのである。

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[右]ローターのデザインなども変更され、モダンな雰囲気に。[中]天才ジェラルド・ジェンタが考案したベゼルやダイヤルのデザインは継続。守るべきところはしっかり守るのだ。[左]ケースの厚みは10.4㎜。自動巻きのスポーツウォッチとしては十分に薄く、シャツの袖口にもすっと収まるサイズだ。

SPEC
  • ケース径:41mm
  • ケース素材:SS
  • ベゼル素材:SS
  • ムーブメント:Cal.4302
  • パワーリザーブ:約70時間
  • 防水性:5気圧
  • 発売時期:6月
  • 価格:¥2,000,000(予価)

HISTORY - 歴史的背景からおさらい

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    1ジュール=ルイ・オーデマ(左)エドワール=オギュスト・ピゲ(右)

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    1907年建設の現本社

“ウォッチバレー”と呼ばれるスイス・ジュウ渓谷。この地に生まれたジュール=ルイ・オーデマとエドワール=オーギュスト・ピゲは、ル・ブラッシュにて1875年に時計工房を立ち上げた。それこそが「オーデマ ピゲ」だ。標高約1000mのジュウ渓谷は、一年の半分が雪に閉ざされる。静かな環境の中で、ひたすら丁寧にパーツを磨き、組み立てていくことで、ブランドは成長していく。オーデマ ピゲは創業から100年間で、約16万本(年産1600本)しか時計を作ってこなかった。それだけ孤高のブランドでありながら、実力によって名声を得てきた。特に得意としていたのが、1882年に完成させた世界初のグランド コンプリカシオン懐中時計を筆頭とする複雑時計たちであり、こういった技術を丁寧に受け継ぐことで、現在でもオーデマ ピゲはスイス屈指の技巧派ブランドと称されるようになったのだ

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    取締役会長ジャスミン・オーデマ(ジュール=ルイ・オーデマの曽孫

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    取締役副会長オリヴィエ・オーデマ(エドワール=オーギュスト・ピゲの曽孫

f:id:natsuko_toma:20190320163106j:plain現マニュファクチュール

では、どうやって技術を継承してきたのか?実はオーデマ ピゲは、今でも創業家が経営に携わる希少なラグジュアリーブランドである。CEOは外部から招聘するが、50年後も100年後も、オーデマ ピゲらしさを守り抜くことが絶対条件なのだ。現在は、ジュール=ルイ・オーデマの曽孫であるジャスミン・オーデマ(左)とエドワール=オーギュスト・ピゲの曽孫であるオリヴィエ・オーデマ(右)が経営に参加しており、伝統やノウハウの継承に力を入れる。また未来への投資も行っており、ジュウ渓谷の自然環境を守るために、2000年に完成した時計工房「マニュファクチュール・デ・フォルジュ」は、スイスの環境基準「MINERGIE-ECO®」に適合させている。さらに年内には新しいミュージアムも完成予定だ。
伝統を尊び、伝統を継承し、それらを前進させる。だからオーデマ ピゲは、名門と呼ばれるのだ。

HISTORICAL WATCHES - 歴史的アーカイブ

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    1882年 世界初グランド コカンプリカシオン懐中時計開発

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    1892年 世界初ミニッツリピーター搭載腕時計を開発

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    1955年 世界初アストロノミカル閏年年表のついたパーペチュアルカレンダーリストウォッチを開発

[左]懐中時計「グランド コンプリカシオン」は、1882年に発表。グランド/プティットソヌリとミニッツリピーター、アラーム、スプリットセコンド・クロノグラフなどを備えていた。[中]ゴングとハンマーと使って現在時刻を知らせる「ミニッツリピーター」機構を小型化し、腕時計に搭載した(1892年)のもオーデマ ピゲが初である。[右]閏年表示付きの腕時計型パーペチュアルカレンダーを完成させたのもオーデマ ピゲで、1955年に発売している。

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    1972年 ジェラルド・ジェンタのスケッチ画 世界初ステンレススティールを採用したラグジュアリースポーツウォッチ「ロイヤル オーク」誕生。

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    1993年 ロイヤル オーク オフショア発表

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    1995年 ミレネリー誕生

[左]ドレスウォッチ級の仕上げを行いつつ、ステンレススティール製のケースでスポーティにまとめた「ロイヤル オーク」は、1972年に誕生。多くのフォロアーを生み出した。[中]ロイヤル オークをさらにスポーティに進化させた「ロイヤル オーク オフショア」は、1993年に登場。現在も圧倒的人気を誇る。[右]優雅な時計も得意であり、1995年には楕円型ケースの「ミレネリー」がスタート。デザイン性を強く意識したコレクションであり、オーデマ ピゲ流のエレガンスを表現する。

technique - 技術力の高さに関して

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デザイン、表現力、エレガンスなどオーデマ ピゲを形容する言葉はたくさんあるが、時計愛好家から一目置かれるのは、やはり卓越した技術があるからだろう。オーデマ ピゲは傘下に複雑時計工房「オーデマ ピゲ・ルノー エ パピ(APRP)」があり、ここでスイス最高峰の複雑機構が生み出される。例えば完全無注油の「オーデマ ピゲ脱進機」は、潤滑油の劣化による精度低下を防ぐという目標のために開発したもの。時計師の究極の夢である“完全無注油の時計”への実現は、もうすぐそこまで来ているのだ。

  • Text : Tetsuo Shinoda
  • Photographer : Kouki Saotome
  • Direction : Keiichi Moritani

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