スーパーバイザー戸賀敬城とゆく! 超速報ジュネーブサロン最新時計ヒットパレード2019【vol.1】

春の足音が聞こえ始め、ファッションが軽やかなになると、なぜだか新しい時計が欲しくなる。
ということで今年もブルーダー取材班は1月のスイスを訪問。招待客しか入れない二つの時計展示会を巡りながら見つけた、とっておきの新作時計を、前半、後半の二回に分けた超ボリュームにてスーパーバイザー戸賀のコメント付きで紹介したい。

例年よりも少し暖かかった1月のジュネーブ。ひょっとすると、S.I.H.H.とWPHHという二つの新作時計発表会の熱気が伝わったからか もしれない。 S.I.H.H.(Salon International de la Haute Horlogerie)は、カルティエを中心に、オーデマ ピゲやパネライなどのハイエンドウォッチブラ ンドが揃う高級時計の見本市のこと。そしてフランク ミュラー率いるウォッチランドグループが、ジュネーブ市の郊外にてWPHH(World Presentation of Haute Horlogerie)を開催。多くのリテーラーやジャーナリストが、世界中からこの地を訪れた。 今年の新作時計の傾向は、みんなで大きなトレンドを追いかけるというよりは、創造性やタフネス、歴史の継承など、ブランド哲学を押 し出す動きが目立った。それぞれの個性が明確化し、今まで以上に自分自身をアピールするアクセサリーとしての効果が強まっていると いうことは、腕元アピールに余念がないブルーダー読者にとっては嬉しい傾向といえるだろう。

01 AUDEMARS PIGUET

オーデマ ピゲ「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ・オートマティック」

「アイコンを内包した驚きの新コレクションが登場!即購入を決意しました」戸賀

「ロイヤル オーク」で人気爆発中の名門オーデマ ピゲは、積み上げてきた創造性を発揮した新コレクション「CODE 11.59バイ オーデマ ピゲ」(コード イレブン・フィフティーナイン バイ オーデマ ピゲ)を発表。しかもいきなり三針、クロノグラフ、コンプリケーションモデル(トゥールビヨンなど)全13リファレンスを一挙投入するほど熱を入れている。このモデルの特徴は唯一無二なディテールにあらわれている。極限まで薄くされたベゼルと、美しい8層のラッカー塗装ダイアル(3針とクロノグラフ)、最新鋭の技術によって生まれたブランドロゴおよびインデックス。さらには、オーデマ ピゲらしい8角形ピースを、ラウンド型のケースでサンドイッチ。くり抜かれたラグも美しく印象的だ。今までにない立体的なケースフォルムには、オーデマ ピゲの創造性と時計製造技術の高さが表れている。繊細な仕上げのドレッシーさ、と大胆で迫力のある構造が生み出す二面性こそ新コレクション「CODE 11.59バイ オーデマ ピゲ」の真の魅力といえる。風防ガラスも緩やかにカーブしており、どこから見てもため息モノの美しさだ。「印象的なモデル名は、新しい1日が始まる直前である11時59分を意味しているそう。これがオーデマ ピゲのニュースタイルだ! という意気込みを感じますね。あまりの仕上がりに、即座に三針モデルをオーダーしてしまいました」

「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ・オートマティック」で、新たに開発された新型ムーブメント「Cal.4302」を搭載。同機は「Cal.3120」を継承するオーデマ ピゲの主軸となるムーブメントとして、これから様々なモデルに搭載されていくことだろう。

SPEC
  • ケース径:41mm
  • ケース素材:18kwq
  • ムーブメント:Cal.4302 (自動巻き)
  • パワーリザーブ:約70時間
  • 防水性:3気圧防水
  • 発売時期:2月
  • 価格:¥2,800,000(税抜)

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク オフショア・クロノグラフ」

「ラグジュアリーなのにポップ。この二面性が面白い」戸賀

昨年25周年を迎えた「ロイヤル オーク オフショア」は、大型ケースや優れた防水性を備えたスポーツウォッチ。その押し出しの強さを楽しむために近年はカラフルなダイヤルを使ったモデルが増えていたが、今年はその流れがさらに強まった。カラーセラミックの8角形ベゼルや色鮮やかなダイヤルに合わせるように、ラバーストラップをカモフラ柄にしているのだ。そもそも存在感のある時計だっただけに、このインパクトは絶大である。「いかにもリゾート地のゴルフ場が似合いそうなポップで洒脱な時計ですが、あえてシックなジャケットスタイルに合わせると、腕元で個性が光る着こなしになりそうです」

SPEC
  • ケース径:41mm
  • ケース素材:SS ・ PG
  • ムーブメント:Cal.3126/3840 (自動巻き)
  • パワーリザーブ:約50時間
  • 防水性:10気圧防水
  • 発売時期:8月
  • 価格:[SS]¥3,350,000(予価) [PG]¥3,350,000(予価)

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク・オートマティック」

「揺るぎなき傑作は、さりげない進化を果たす」戸賀

1972年に誕生し、“ラグジュアリースポーツウォッチ”というジャンルを作ってしまった時計界のマスターピース「ロイヤル オーク」がリニューアル。といっても天才デザイナーであるジェラルド・ジェンタが考案した8角形ベゼルなどのデザインは不変。変更したのはムーブメントで、パワーリザーブなどを伸ばした新型のCal.4302が搭載されている。「先代のCal.3120も非常に優れたムーブメントでしたが、『CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ・オートマティック』にも搭載される新しいCal.4302は、振動数を上げることで精度を高めており、持続時間も長くなった。つまりは体幹が強くなった印象ですね。クラシックなデザインでも中身はしっかりアップデイトしていく点には、オーデマ ピゲの本気を感じます」

SPEC
  • ケース径:41mm
  • ケース素材:SS
  • ムーブメント:Cal.4302 (自動巻き)
  • パワーリザーブ:約70時間
  • 防水性:5気圧防水
  • 発売時期:6月
  • 価格:¥2,000,000(予価)

02 PANERAI

パネライ「パネライ サブマーシブル ルナロッサ-47㎜」

「船体の帆が文字盤に配されたルナロッサコラボは見逃せませんね」戸賀

イタリア海軍特殊潜水部隊のミッションウォッチとして生まれたパネライは、いつでも海と近しい関係にある。今年の新作はダイバーズウォッチ「サブマーシブル」が中心だったが、会場では第36回アメリカズカップに挑戦するイタリアチーム「ルナロッサ」のオフィシャルスポンサーになるというニュースも話題となった。しかも参戦を記念して誕生したモデルがカッコいい。船体にも用いるカーボン素材でケース作り、ダイヤルはルナロッサの帆を加工して使用している。ブラック&レッドの配色はチームのイメージカラーであり、ケースバックにはヨットの姿を彫り込んだ。「パネライは最先端を追求してきたブランド。海×ハイテクの新しいスタイルですね」

SPEC
  • ケース径:47mm
  • ケース素材:カーボテック
  • ムーブメント:P.9010(自動巻き)
  • パワーリザーブ:約72時間
  • 防水性:30気圧防水
  • 発売時期:7月
  • 価格:¥2,290,000(税抜)

パネライ「パネライ サブマーシブル BMG-TECH™-47㎜」

「ハイテクを極め、使い勝手も極めた時計」戸賀

海の中でも壊れず、それでいて視認性の高い時計を作ることから歴史が始まったパネライにとって、研究と挑戦は何よりも大切なこと。その信念は今も変わらない。モデル名にもなっている「BMG-TECH」というのは、特殊な金属ガラス合金を高圧射出し、それを急激に冷却することで結晶の並びをランダムにする技術のこと。こうすることによって金属ケースの剛性が高まり、耐腐蝕性や耐磁性能も向上する。しかもとても軽いため、日常的に楽しめる時計になっているのだ。「実用性を意識していますが、カーボン製のベゼルの縞模様はそれぞれに異なるので、一本モノの価値がある。そういうさり気ないこだわりが嬉しいんですよね」

[左]パネライのアイデンティティである完成度の高いリューズプロテクター。[右]ケース、リュウズとリュウズプロテクターに使用されているBMGテック™は、特殊なガラス合金から生成される金属ガラス(バルク金属ガラス)でできており、時を経ても外観が変化しない素晴らしい耐久性を備えています。ベゼルに配されたカーボンとのコントラストを楽しみたい。

SPEC
  • ケース径:47mm
  • ケース素材:BMG テック™
  • ムーブメント:P.9010 (自動巻き)
  • パワーリザーブ:約72時間
  • 防水性:30気圧防水
  • 発売時期:12月
  • 価格:¥1,680,000(税抜)

03 A.LANGE & SOHNE

A.ランゲ&ゾーネ「ランゲ1“25th アニバーサリー”」

「歴史的アイコンモデルのアニバーサリーは奇跡の希少性!これは間違いないなく買いでしょ」戸賀

ドイツ時計産業を拓いた超名門でありながら、第二次世界大戦後は東独政府の元で国営企業となってしまったA.ランゲ&ゾーネ。しかし東西ドイツが再統合するとブランドは再興され、1994年には待望の復興第一弾モデルが誕生。そのひとつが「ランゲ1」である。すべての表示が重ならないように配置され、大きなアウトサイズデイトを備えるクラシカルなのに前衛的なデザインは、すぐに人気を博し時計界のマスターピースとなった。このモデルは誕生25周年を記念する限定モデル。「開閉できる裏蓋には本社社屋をエングレービング、ランゲ再興に寄与したウォルター・ランゲとギュンター・ブリュームラインの名が入っているところが時計愛好家的には、嬉しい。二人は時計界のカリスマであり偉人ですからね」

[左]ハンタータイプのケースバックから見えるランゲ自社製キャリバーL121.1のテンプ受けには、25周年記念を表すアウトサイズデイトのモチーフがハンドエングレービングされている。[右]表示関係はブルーで統一。ホイワトゴールドケースでシルバーカラーのシルバー無垢製ダイヤルにディープブルーでプリントされた数字とインデックス、日付の青い文字が珠玉の存在感を醸す。

SPEC
  • ケース径:38.5mm
  • ケース素材:WG
  • ムーブメント:Cal.L121.1(手巻き)
  • パワーリザーブ:約72時間
  • 防水性:日常生活防水
  • 発売時期:2019年2月以降
  • 予定価格:¥4,890,000(税抜)

04 VACHERON CONSTANTIN

ヴァシュロン・コンスタンタン「オーヴァーシーズ・トゥールビヨン」

「『オーヴァーシーズ』のトゥールビヨン仕様は反則でしょ!」戸賀

エレガントなデザインとタフな性能を兼ね備える「オーヴァーシーズ」に、なんとトゥールビヨンモデルが登場。しかもブランドでは初となる“ステンレススティールケースのトゥールビヨン”というのも話題だ。そもそもこのオーヴァーシーズコレクションは、5気圧防水や耐磁性能、そしてレザーやラバーのストラップへと簡単に取り換えることができるインターチェンジャブルシステムを採用しており、実用性の高さには定評がある。となればこのモデルは“日常使いできるトゥールビヨン”として楽しめそうだ。「まあ、とにかく欲しいですよ。あの人気モデルのトゥールビヨン仕様なんですから。ムーブメントの周囲を環状ローターが回転する仕組みなので、ケースの厚みも10.39㎜に抑えています。これならシャツの袖口とも干渉しないのでパーティの席でも、また、大人のハズしとしてラフなスタイルにハメても◎。充分モトは取れそうです(笑)」

SPEC
  • ケース径:42.5mm
  • ケース素材:SS
  • ムーブメント:Cal.2160(自動巻き)
  • パワーリザーブ:約60時間
  • 防水性:5気圧防水
  • 発売時期:2019年10月予定
  • 価格:時価 ※SIHH時点1220万円(税抜)

ヴァシュロン・コンスタンタン「トラディショナル・ツインビート・パーペチュアルカレンダー」

「優れた技術で時計愛好家の心をわし掴み」戸賀

月の大小だけでなく閏年の有無まで計算して動く永久カレンダー機構は、実用面でも評価される超複雑機構。しかし時計のサイズをコン パクトにするために手巻き式ムーブメントを採用すると、ゼンマイが切れて時計が停止し、せっかくのカレンダーがズレてしまうという問題が発生してしまう。これはたくさんの時計を持つリッチなコレクターにとっては切実な悩みとなっている。それを解決したのがこのモデル。なんと内部に切り替え式の2つの脱進機を搭載しており、使用時はハイビートで動かして高精度を追求しつつ、長期休暇の時は超ロービートへと切り替えることで、なんと約65日間も連続駆動するのだ。「超ロービート状態になると、どうしても精度は劣化しますが、それでも数時間レベルなのでカレンダーには影響がない。時計愛好家のニーズを的確に読み取り、それを優れた技術で形にしたという凄い時計ですよ」

SPEC
  • ケース径:42mm
  • ケース素材:プラチナ
  • ムーブメント:Cal.3610QP(手巻き)
  • パワーリザーブ:毎時3万6000回振動するアクティブモードでは約4日間、毎時8640回振動するスタンバイモードでは約65日間
  • 防水性:3気圧防水
  • 発売時期:2019年秋以降
  • 価格:※SIHH時点2380万円(税抜)

05 PIAGET

ピアジェ「アルティプラノ」

「特殊素材メテオライトを使っても別格のエレガンスは健在ですね」戸賀

ピアジェが超薄型ムーブメントにこだわるのは、ムーブメントが薄ければ、装飾やダイヤル素材に凝ったとしても優雅なプロポーションを崩すことがないから。つまり美しい時計を作りたいという信念で、技術的にはかなり難易度が高い超薄型ムーブメントの開発へと立ち向かうのだ。今年の新作も、その“薄さ”が生きている。ダイヤル素材に使用したのは天然の隕石(メテオライト)を薄くカットしたも の。表面加工によって色調を変えており、グレーモデルは300本限定で、ゴールドダイヤルは直営ブティック50本限定となる。「ピアジェの美に対する探求心には感服します。こういう時計はシンプルな着こなしに合わせて、上品に楽しみたいですね」

繊細な素材ゆえに、ダイヤルはある程度厚みがあるが、それでも自社製のCal.1203Pの厚みは3㎜しかないので、ケース厚は6.36㎜に抑 えられている。いつもの何気ないスタイリングに、ここぞとばかりの品を与えてくれるのもピアジェ「アルティプラノ」の特徴といえる。

SPEC
  • ケース径:40mm
  • ケース素材:PG
  • ムーブメント:ピアジェ自社製極薄自動巻ムーブメント1203P
  • パワーリザーブ:約44時間
  • 防水性:3気圧防水
  • 発売時期:6月予定
  • 価格:¥3,175,000(税抜)| ゴールドカラーメテオライト文字盤 世界限定50本
  •    ¥3,050,000(税抜)| グレーメテオライト文字盤 世界限定300本

06 ULYSSE NARDIN

ユリス・ナルダン「スケルトンX」

「最先端の時計技術がもたらした不思議な浮遊感」戸賀

ここ数年で一気に増えたスケルトンウォッチは、内部のメカニズムを見せることで、時計技術のレベルの高さをアピールするのが目的。実力派マニュファクチュールまでなると、美しく魅せることを前提にした特殊構造を開発してしまう。今年のユリス・ナルダンは徹底的にスケルトンにこだわり、全てが見えるようにメカニズムを設計。宙に浮遊するパーツたちは、重力を感じさせないまま、優雅かつ精密に時を刻むのだ。さらにカーボンとゴールドに組み合わせるハイテク&リッチな素材カーボニウムを時計に初採用しており、ビジュアル表現という点でも、他社を一歩も二歩も先んじている。「極端なスケルトン化は、素材や加工といった時計技術の進化がもたらした新し いスタイル。ただじっとメカニズムを眺めていたくなる、時間を忘れさせる時計ですね」

SPEC
  • ケース径:[左]42mm [右]43mm
  • ケース素材:[左]チタン製 [右]カーボニウム
  • ムーブメント:Cal.UN-371 (手巻き)
  • パワーリザーブ:約96時間
  • 防水性:5気圧防水
  • 発売時期:6月
  • 価格:[左]¥2,000,000 [右]¥2,430,000(税抜)

07 BAUME & MERCIER

ボーム&メルシエ「クリフトン ボーマティック」

「大ヒットした自社ムーブメント搭載のドレスウォッチがオシャレに進化」戸賀

本当に使いやすい時計とは何か? そのシンプルかつ壮大な問いに対して、1830年創業の老舗ボーム&メルシエが出した回答が、新型ムーブメント「ボーマティック」だった。このムーブメントは、耐磁性能と長時間駆動、そして高い精度を兼ね備え、しかもメンテナンス期間を5~7年ごと(通常は3~5年)へと大幅に伸ばすことでユーザビリティを向上させたのだ。今年はそのボーマティックに新色として、美しいブルーのグラデーションダイヤルが登場した。「メンズファッションの定番色でもあるブルーは、時計界でも大きな勢力となりました。だからこそグラデーションを使って個性を引き出したのはうまい戦略。これなら腕元でさりげなくセンスを表現できそうです」

SPEC
  • ケース径:40mm
  • ケース素材:SS
  • ムーブメント:Cal.BM13-1975A(自動巻き)
  • パワーリザーブ:約120時間
  • 防水性:5気圧防水
  • 発売時期:9月予定
  • 価格:¥335,000(税抜)
  • Text : Tetsuo Shinoda、Keiichi Moritani
  • Photographer : Yoshinori Eto
  • Direction : Keiichi Moritani

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