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特集 クールスモール

伝統に裏打ちされたスピードと個性、アバルト595 ツーリズモ

我が国ではまだ耳慣れないアバルトのネーミングだが、本国イタリアでは古くからスポーツカーファン垂涎のブランドとして有名である。小粒だがパワフルで、可愛らしいがクイック。そんな相反する要素をギュッと凝縮した1台は、時代を越えて愛されるイタリア車の要素を全て兼ね備えている。アバルト595は小型車を越える驚きを秘めた1台である。

日常生活にフォーカスするならば、小型車こそが自動車の理想形であるに違いない。都市部の立体駐車場に楽々収めることができ、街中での取り回しも容易で、省燃費性能にも優れている。

だが一方で、モノに対して並々ならぬ拘りを持つBRUDERにとっては、アピールの足りないモデルが多いことも確かである。

超がつく高級車やスポーツカーと違い、小型車には伝統に裏打ちされた個性を求めることが難しい。複雑なシステムを搭載したり上質な素材を惜しみなく使用したり、またモータスポーツで活躍するといった華やかな話題は少な目となる。

だが中には例外もある。いわゆるプレミアム・コンパクトと言われるモデルがそれで、この手のクルマは伝統的に階級社会を是としてきた国々の作品であることが多い。イギリスが誇るミニや、イタリアのランチアやアバルトといったメイクスが作り込む、小粒だが存在感の強いモデルたちである。

VWのニュービートルや、前述のミニ、そしてフィアットが蘇らせた500(チンクェチェント)といった丸みを帯びたモデルに共通する点は、往年の名車のセルフカバーであるという点だろう。

世界的に有名な往年の名車を最新の技術によって再現する。その企ては、21世紀の自動車世界においてひとつのトレンドとなっている。 往年の名車はその存在自体が伝統であり、仕立てや高級感にも説得力が備わる。今回紹介するアバルト595Cツーリズモもイタリアの自動車史に刻まれた栄光の1台である。

今も昔もアバルト595のベースとなっているモデルは、フィアット500である。1950年代にデビューしたモデルがヌオーバ(ニュー)500で、これ以上何も差し引くことのできない素朴な見た目と走りによってイタリア国民の生活を長らく支え、アイコンとして愛されているのである。

1950~1960年代にかけてフィアット・ヌオーバ500のエンジンを徹底的にチューニングし、はるかに格上のスポーツカーを追い抜くほどのポテンシャルを与えたメイクスこそ、カルロ・アバルト率いる「アバルト」だった。

独自のレーシングカーを製作、もしくはフィアットのような大メーカーの自動車に手を加え、サソリをモチーフにしたエンブレムを掲げてレースを戦っていたアバルトは、レースの勝ち星によって報奨金を得る」という独自の契約をフィアットと結んだことでブランドの規模を拡大したのである。

現代に蘇ったアバルト・ブランド。その基幹モデルとなっているのがアバルト595である。モデル名である595という数字はヌオーバ500の時代にアバルトが生産していた上級モデルの後継であることを意味しており、史実に則り現行のフィアット500をベースとしている。

フィアット500とアバルト595の外観上の違いは、ボディの前後左右に備わるサソリのエンブレムだが、アグレッシヴな造形の前後バンパーやサイドスカート、マフラーやホイールなど多くのパーツがアバルト専用となっている。

インテリアも同様で、明るい色使いで丸みを帯びていたフィアット500の室内空間は、スポーティなシートや追加メーター、そして小さな高級車らしい上質な素材を用い、これらを少し暗めのトーンで纏めることで、フィアットにない独特のプレミアム感を醸し出すことに成功している。

アバルト595は2ドア4名乗車のレイアウトで、リアにハッチバック式のラゲッジルームを備えている。もとものと車幅が狭いので、キャディバッグを横方向に搭載することはできない。

だが片側のシートバックを倒すことによって縦方向に2本のキャディバッグを搭載することができる。

今回の595Cツーリズモはルーフ部分のソフトトップが大きく開くカブリオレモデルなので、トランクリッドの開口部の大きさは若干制限されるが、それでもキャディバッグ2本は余裕をもって積むことが可能となっている。

ひとりで近所のゴルフ練習場に行くならば、キャディバッグを助手席に寝かせてしまうのも有効な使い方だ。

荷室の積載量や使い勝手の良さという点で、アバルト595に比肩するモデルは珍しくない。だが豪快かつ質感の高い走りに関して、アバルト595にライバルは存在しない。

アバルトのスタンダードモデルである595の1.4リッターターボの最高出力は145psに設定されている。ベースとなった現行フィアット500の最強モデルが85psであることを考えるとアバルトのパワーは圧倒的といえる。しかも今回の撮影個体である595Cツーリズモのパワーユニットはフィアット500の倍近い165psという最高出力を叩き出しているのである。

アバルト595Cツーリズモが備えるギアボックスはATモード付の5速シーケンシャル。5速という段数は現代としては少なめだが、しかし賢いシフトチェンジによってターボの加速に切れ味鋭いリズムをプラスしてくれる。

圧倒的な動力性能を誇るフィアット595Cツーリズモだが、その本懐はステアリングを通して伝わってくる太いタイヤの反力や、今どきのターボエンジンとしては強めのターボキック、そしていつの間にか驚くほどの速度に達しているという体感性能の高さにある。

実用的な小型車に後からいくらお金を掛けてチューニングしても、これほどの高級感や走りの一体感、全身から溢れ出すオーラは得られまい。現代のアバルトはフィアット傘下の技術集団にあるが、彼らのチューニング技術もまたイタリアの伝統芸と言えるのである。

普段はどっしりとして落ち着いた大型のセダンでカントリークラブを往復しているようなゴルファーは、クルマ自体に満足していても、ドライビングの刺激とは縁遠いかもしれない。

平凡な小型車の場合も、便利ではあるがそれ以上の驚きや興奮を期待することはできないだろう。アバルト595Cツーリズモのステアリングを握れば、あなたの自動車観に大きな変化が起こることは間違いない。

週末の早朝、アバルトを駆って少し攻撃的な気分でカントリークラブを訪ねることができれば、あなたのスコアにもポジティブな変化が現れるかもしれない。

ABARTH 595 TURISMO
メーカー希望小売価格:3,845,000円~(税込)

  • ※写真はオプション装着車。
  • ※表示価格にはオプションは含まれておりません。
    ボディサイズ | 全長3,660 × 全幅1,625 × 全高1,505mm ホイールベース | 2,300mm エンジン形式 | 直列4気筒DOHCインタークーラーターボ 排気量 | 1,368cc エンジン最高出力 |165ps (121kW) / 5500rpm エンジン最大トルク | 230Nm / 2250rpm
  • ボディサイズ | 全長3,660 × 全幅1,625 × 全高1,505mm
  • ホイールベース |2,300mm
  • エンジン |直列4気筒DOHCインタークーラーターボ
  • 排気量|1,368 cc
  • 最高出力 |165ps (121kW) / 5500 rpm
  • 最大トルク | 230Nm / 2250 rpm
  • アバルト595ツーリズモのトピック
  • ●豪快な音と加速で魅せるターボエンジン
  • ●小型車らしからぬ上質な革内装
  • ●伝説のエンブレムが引き締める外観
  • Text : Takuo Yosshida
  • Photographer : Koichi Shinohara

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