あらゆる世界にヒエラルキーが存在し、その頂点を認識することができる。現代の自動車シーンで隆盛を誇るクロスオーバーSUVの頂点は、言わずもがなレンジローバーである。自動車世界に新たなカテゴリーを創り出し、今なお躍進する1台は、何ごとにも強い拘りを持ち、成功を収めてきた人生の伴侶として相応しい贅を尽くした1台である。

原初の絶対的な1台、レンジローバー

平面を基調とした堂々としたボディは、4つのタイヤで大地を踏みしめるオフローダーそのものだが、しかしその室内にはファーストクラスもかくやという世界観が広がっている。

セダンの歴史は自動車のそれにも例えられるほど古く、特定の1台を開祖とすることはできないが、今をときめくクロスオーバーSUVならば、原初の絶対的な1台を挙げることが可能だ。1971年に生を受けたレンジローバーである。

レンジローバー以前の4輪駆動車はアメリカのジープに代表されるオフロードモデルばかりであり、軍用車として発展してきた経緯がある。

レンジローバーを産み出したイギリスのランドローバー社も、その処女作はジープにヒントを得たものだった。ローバー社のエンジニアと専務だったウィルクス兄弟は、アングルシー島に持っていた自分たちの農地や広大な敷地を管理するためのクルマを必要としていたのである。

1940年代の終わり頃、ウィルクス兄弟によって作られた初代のランドローバーは軍用車よりもはるかに民生的な乗り物であり、イギリスの農夫やカントリージェントルマンに喜ばれた。

だがそれでも薄いアルミパネルで作られたボディと簡素な内装しか持ち合わせていなかったランドローバーは、オフローダーと普通乗用車の領域を“クロスオーバー”するには至らない荒々しい乗り物だった。

今世紀になって栄華を誇るクロスオーバーSUVと、そしてランドローバーにとっての革命は1971年に起こった。貴族が原野で狩猟に興じた後、そのままロンドンのホテルに乗りつけられるようなタフでしかしフォーマルな風格を帯びたモデルがリリースされたのである。すっきりとした2ドア・ボディを与えられた初代レンジローバーの誕生である。

レンジローバーは新たなカテゴリーとしてアッパークラスの顧客に愛され、元々2ドアだったボディは4ドアとなってプレステージ・ファミリーカーとしての素養を身に着けていく。

日々真剣に大地と向き合い、しかし華やかな世界にも精通しているプロゴルファーの中にはレンジローバーを愛車としている人も多いのだが、貴族的でワイルドなこのクルマの出自を考えれば、それは至極真っ当な帰結といえる。

ビスポークオーダーの高性能モデル

現行レンジローバーは4代目にあたり、今回試乗した個体はラインナップの最上級となるレンジローバー SVオートバイオグラフィーのロングホイールベース版である。

車名のSVはジャガー・ランドローバー社においてビスポークオーダーや高性能モデルの少量生産を手掛けるスペシャルビークルオペレーションの作品であることを表し、オートバイオグラフィーは2代目レンジローバー以降に採用された最上級グレードの名称であり、ロングホイールベースは後席の足元を広く確保したバージョンとなる。

オーナーがゲストにこれらの長いプロフィールをいちいち説明する必要はおそらくない。伊ポルトローナ・フラウ社製の皮革が用いられた上質なシートに腰かければ、ほとんどの人が無言のうちにただならぬ風格を察するはずだし、言葉で簡潔に表すならば「これ以上ない1台」という表現で済む。

都合4代に渡るレンジローバーのスタイリングコンセプトは同一であり、機能の追求をそのまま形にしたものと言っていい。必要にして十分な大きさを誇るボディの取り回し良くするために四隅をはっきりと主張させ、それ以外は虚飾を排した平面で構成する。

グラスエリアは可能な限り広くとられ、コマンドポジションと呼ばれる乗員の高い着座位置と相まって良好な視界を確保している。高く設定された車高は、走破性を考慮したものだが、もちろん視界や安全性といった面にまで効果を及ぼしている。

機能一辺倒で構成されたレンジローバーのスタイリングではあるが、水平基調のシンプルなラインはスピード感にも通じているし、RCとガラスで構成された近代的な建築物との相性にも優れる。

飾り気のない初代レンジローバーが自動車として初めてルーブル美術館に展示された事実は、偶然ではないのである。

ブリティッシュ・ラグジュアリーの体現

オプション設定されたデュオトーンペイントが施されたボディに隠された豪奢なインテリアは、レンジローバー SVオートバイオグラフィーの白眉といえる。ネイビーとアイボリーの皮革でブリティッシュ・ラグジュアリーが体現された室内空間は高級なサロンのようであり、4つあるシートの全てに高いプライオリティが与えられている。

特にスタンダード・ボディと比べホイールベースが200mmも長く設定されたロングホイールベース版のリアシートは“エグゼクティブクラスコンフォートプラスシート”という名称の通りの豪華さを湛えている。

リクライニング機構と電動でせり出すオットマンが作り出すゆったりとしたシートポジション(助手席後ろのみ)は、自動車という枠を超越したくつろぎを提供することができるのである。

レンジローバーはオーナーがステアリングを握って楽しむことを第一義としているが、最上級のおもてなしを提供する術にも長けているのである。

レンジローバーのリアゲートは上下方向にゲートが開く伝統があり、それは最上級モデルとて例外ではない。

ラゲッジスペースは外観から窺える通りの広さで、荷室を覆うトノーカバーを使用した場合、ゴルフバッグは斜め方向に3本を収納できる。

また試乗車にはオプション設定されているテールゲートイベントシートが装着されているので、フィールドに繰り出して夜の細空を仰ぎ見るような、イギリス貴族のライフスタイルを垣間見ることもできるだろう。

全長5.2m越え、オールアルミのボディを用いてもなお車重2.6トン越えの巨体であるにもかかわらず、レンジローバーをドライブするとその軽快さに驚かされる。重量感はあっても、ステアリングからタイヤに至るまでの伝達系に遊びがなく、スポーティなドライブが可能なのである。

小山のように背の高いレンジローバーだが、電子制御のエアサスペンションが乗り心地と操縦安定性を絶えず両立させてくれるため、コーナリングで不快なロールが残るようなことはなく、しかし路面との接触はフワッとしたソフトタッチに終始する。

もちろんクロスオーバーSUVを代表する高級車だけに、運転支援の装備も充実しており、アダプティブクルーズコントロールや歩行者検知機能の付いた自動緊急ブレーキも標準で備わっているので安心だ。

駐車場では前後のバンパーに仕込まれたパークディスタンスコントロールや360度ビューのサラウンドカメラシステムのサポートが効果的なので、大きなボディの取り回しにも苦労しない。

クロスオーバーSUVというカテゴリーを創り出したレンジローバー、その最新作は今なおシーンをリードする1台であり続けている。

21世紀に入って以降、ライバルはこぞってレンジローバーを研究し、市場に参入してきているが、一向にその差が詰まらない裏には理由がある。それはレンジローバー以外の全てのSUVが、他のセダンモデルと共用のプラットフォームを使用しているからである。一方のレンジローバーはこれまでの4世代全てが、本格的なオフロード走行に耐える専用のプラットフォームを使用し、目に見えない部分まで徹底的に作り込みを行っているからである。

クロスオーバーSUVの頂点に君臨し続けるレンジローバー。中でもSVオートバイオグラフィー ロングは、成功者のために設えられた特別な1台なのである。

RANGE ROVER SV Autobiography Long
メーカー希望小売価格:29,440,000~(税込)

  • ※写真はオプション装着車。
  • ※表示価格にはオプションは含まれておりません。
  • ボディサイズ | 全長5,205 × 全幅1,985 × 全高1,865mm
  • ホイールベース | 3,120mm
  • エンジン |V型8気筒 DOHCスーパーチャージド
  • 排気量|4,999cc
  • 最高出力 |550ps (405kW) / 6,500 rpm
  • 最大トルク | 680N/m /3,500rpm rpm
  • Text : Takuo Yoshida
  • Photographer : Koichi Shinohara

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かつてバンタイプの乗用車や、いかついクロカン4駆は商用車として括られたり、局地的に重宝されるニッチな存在だった。だがファッションと同じくらい、クルマ世界のトレンドも変化する。昨今話題となる新型車の多くが背の高いクロスオーバーSUVであり、ハイブリッド化や電動化との相性も良いことから、その勢いは今後も止まりそうにない。

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問い合わせ先

ジャガー ランドローバー ジャパンフリーダイヤル:0120-18-5568

ランドローバー: http://www.landrover.co.jp/index.html

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