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試乗レポート

猫科肉食動物の咆哮、ジャガー「FタイプSVR」

2017.09.01

  • イギリス車
  • ジャガー
  • Fタイプ SVR
  • 2シーター
  • スポーツカー

日本でジャガーというと、4ドアセダンをイメージする方が多いかもしれない。確かにジャガーのセダンは——ここではセダンではなく、英国風に“サルーン”と呼ぶべきか——優雅でジェントル、他ブランドには代え難い魅力がある。けれども歴史を遡れば、ジャガーはスポーツカーで名を上げたブランドである。まず、戦後間もなく発表されたXK120というスポーツカーが高く評価された。1950年代にはCタイプとDタイプでルマン24時間レースを5度も制し、ジャガーは高性能スポーツカーを作るメーカーとしての地位を確立したのだ。今回は肉食動物の咆哮、ジャガー「FタイプSVR」をレポートする。

ジャガーの高性能スポーツカーCタイプ、Dタイプに続くEタイプは、その流麗なフォルムと高性能で、全世界で大ヒットする。そして1970年代半ばに生産を終えたEタイプから約40年の時を経て発表されたのが、現在のFタイプだ。Fタイプは、“ビューティフル・ファスト・カー”というジャガーのクルマ作りに対するコンセプトを見事に体現したスポーツカーである。ただし、ここに紹介するジャガーFタイプSVRは、“美しくて速いクルマ”からさらに一歩踏み込んだモデルだ。ジャガーには、オーダーメイド車やハイパフォーマンス仕様など、特別なモデルの開発を担当するSVO(スペシャル・ヴィークル・オペレーション)という部門がある。メルセデス・ベンツにおけるAMG、BMWにおけるM社をイメージしていただければ間違いないだろう。このSVOが手がける高性能仕様を、SVRと呼ぶ。

ジャガーFタイプSVRに乗り込むと、これがただのハイパフォーマンス仕様ではないことがわかる。キルト加工が施された豪奢なレザーシートが出迎えてくれるからだ。エンジンスタートボタンを押すと、排気量5リッターのスーパーチャージャー付きV型8気筒エンジンが、「フォンッ!」と目覚めた。猫科の肉食動物の咆哮だ。まるでレーシングマシンのような演出が嬉しくて、エンジンを切ってもう一度スタートボタンを押す。「フォン!」。何度聞いても気分がアガる。ただし、最高出力575psのエンジンは、街中でゆっくり走っても扱いにくさは一切ない。低回転域からレスポンスが良くて乗りやすいのは、ターボチャージャーではなくスーパーチャージャーを採用したからだろう。オートマ限定免許を取り立ての人でもすぐに乗りこなせるぐらい、フレンドリーな性格だ。扱いやすいと感じるのには、組み合わされる8速ATがスムーズかつ素早くギアを変えてくれるという理由もある。

街中で普通に走っている限り、エンジンの快音も耳をつんざくほどではなく、エンジンが回転するフィーリングもジェントル。「ホントに専用チューニングが施された575psの超高性能仕様?」と疑いたくなる。乗り心地も快適で、事前に予想していた「路面の凸凹にビシッビシッと反応する、体育会剣道部的なスパルタンな乗り心地」とはまるで違った。もちろんスポーツカーらしい引き締まった手応えはあるものの、たとえば路上の“凸”を乗り越える時にはサスペンションが自在に伸縮してショックを吸収している様子が伝わってくる。そして“凸”を乗り越えた後の揺れもすっきりと収まる。やや辛口だけれどすっきりとした後味は、淡麗辛口という言葉で表現したくなる乗り味だった。

ただし、アクセルペダルを踏み込むと、まったく別の世界が待っていた。エンジンはまるでレーシングカーのような音とともに回転を上げるのだ。軽くするため一部にチタンを用いたSVR専用のエグゾースト(排気)システムは、ノーマルより明らかにワイルドで甲高いサウンドを発する。「コーン」と「フォーン」が入り交じったエグゾーストノートが、ドライバーを非日常の世界へ連れて行く。加速力も圧倒的で、多少はこういった高性能車に慣れているはずの筆者でも一瞬ひるんでしまうほど。それでも乱暴な加速だと感じないのは、優れた4WDシステムがすべてのパワーを有効に路面に伝えているからだろう。爆発的な加速であるが、しっかりコントロールされている。

そんな強烈な加速は日本の道路環境で不要だと思われる方もいるかもしれない。けれども、そうじゃない。このエンジンは、アクセル操作に対して実に繊細に反応してくれるのだ。アクセルペダルを踏む右脚の親指に少し力を加えただけでもドライバーの気持ちをくみ取ってくれるから、45km/hを50km/hにするのも楽しい。真の意味でよく出来たスポーツカーは、速く走る時に高揚感があるのはもちろん、ゆっくり走っても満足感を感じるものだ。加速タイムとか最高速度といったスペックも凄いが、レスポンスの良さや音の素晴らしさ、繊細な手触りなど、“芸術点”も高いエンジンだ。

ジェントルだったのに力を込めると本気を出すのは、サスペンションも同じだ。ワインディングロードに入ってコーナーを2つ、3つとクリアすると、軽やかな身のこなしに拍手を贈りたくなる。手応えが繊細なのはエンジンと同じで、ステアリングホイールの微小な動きに見事に反応して、ドライバーの意志を前輪に伝える。軽快なハンドリングにはいくつかの理由があるけれど、ノーマル仕様と較べて最大で50kgもの軽量化を果たしてことも大きいだろう。ジャガーFタイプはノーマル仕様でも、先進的なアルミボディの採用によって軽量化に成功している。SVRは、細マッチョがさらに体を絞ったモデルなのだ。

軽快な身のこなしには、ハイテクもかかわっている。まずコーナリングでは、カーブに対してイン側の前後輪にブレーキをかけることで、敏捷に曲がるように制御している。井の頭公園のボートで、片側のオールだけ水の抵抗を与える(ブレーキをかける)と、その場でクルッと向きを変えるのと原理は一緒だ。もうひとつ、左右の後輪のトルク配分を変化させる仕組みも、速いうえに安定した美しいコーナリングフォームにひと役買っている。スポーツカーの黄金律とも言えるスタイルの内側にハイテクを秘めたジャガーFタイプは、“クラシック・ミーツ・モダン”なスポーツカーである。

ちなみにパワーステアリングやオートマチックトランスミッションなどの電子制御は、SVR専用のセッティングが施されており、ワイルドと繊細の二律背反を両立しているのは、そこが大きいと思われる。エクステリアにもSVR専用の装備が用意される。といっても、見かけをスポーティに装うものではなく、いずれも走行性能の向上、つまり速く走るためのものだ。たとえばリアのウィングによって、揚力係数は15%も向上している。リアウィングはカッコだけではなく、高速でのボディの浮き上がりを抑え、300km/h以上の世界でも安定感を実現する機能を備えているのだ。

ジャガーFタイプSVRは、シリーズ中で最もハイパフォーマンスであると同時に、最も洗練されたモデルであるというのが試乗を終えての感想だ。白状すれば、試乗前は、「Fタイプは300psのベーシックグレードでも充分に楽しめる」と思っており、特別なハイパフォーマンス仕様の存在に疑問を持っていた。けれども、乗るとやっぱり違う。値段は張るが、イギリスのスポーツカーらしく、見せびらかすためではなく機能にお金をかけている。だからクルマの価値がわかっている人ほど、値段と価値のバランスに納得できるはずだ。

JAGUAR F-TYPE SVR CONVERTIBLE
車両本体価格:19,520,000円(税込)

  • ボディサイズ | 全長5,110×全幅1,900×全高1,480mm
  • ホイールベース | 3,070mm
  • エンジン | 5.0リッターV8スーパーチャージドエンジン
  • 排気量|4,999CC
  • 最高出力 | 575PS(423kW)/ 6,500 rpm
  • 最大トルク | 71.4kgm(700Nm) 3,500 rpm

問い合わせ先

ジャガー ランドローバー ジャパンフリーダイヤル:0120-18-5568

ジャガー: http://www.jaguar.co.jp/index.htmlランドローバー: http://www.landrover.co.jp/index.html

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